がん患者へ医療用ウイッグの購入助成を
がん予防・対策 活動中の政策着手
2021年6月
課題
友人の紹介でがん経験のある美容師さんから、「抗がん剤治療で脱毛してしまう方へ、医療用のウイッグ購入の支援をしてほしい」と連絡を頂く。
他市では、医療用ウイッグの購入助成を始めている自治体があったが、県内では同様の支援制度を行っている自治体は1つもなかった。
政策
・社会参加の促進および療養⽣活の質の向上を図るため、がん患者の医療用ウイッグ購入に助成してほしい
活動・提案後の動き
・2022年度より長岡市は「がん患者医療用補整具購入費補助金」をスタート
・2024年度、新潟県はがん患者にむけ医療用補正具助成事業を行う市町村を後押しする事業を開始
2021年6月、「知り合いの美容師さんから、ガン患者の方などが使うウイッグ(カツラ)の助成金制度を長岡市にも作ってもらいたいという話を聞きました。他の県や市では助成制度があるのに、新潟県、長岡市にはないと困っているようです。そうゆう方々が住みやすいようにしてほしい」と友人からメッセージを頂く。
美容師さんへお話しを伺いに行く

6月中旬、友人と美容師さんのお話を伺いに行った。
抗がん剤や放射線治療の影響による脱毛で、外見が変化し社会参加に不安を感じる方、外に出るのがつらくなる方が多いこと、脱毛期から回復期の毛量の変化に対応するため、自然な雰囲気で着用するため、一般的なウイッグではなく、医療用のウイッグが必要であることを知る。また、その医療用ウイッグは10万円を超えるものも多く高額であること、高額であるが故、がん治療中の方の経済的な負担にもなっている、とのこと。他県他市では、すでに購入助成制度を行っている自治体もあり、新潟県では同様の助成制度はなかった。
担当課へ報告・相談
伺った内容を担当課へ伝えた。担当課長からも、
・これから医師会や基幹病院に医療用ウィッグの需要について、リサーチしたい。
・需要が少なくても光が当たる人がいるなら前向きに考えたい。とお話を頂く。
他県他市の事例を調査
実際に行っている他市の担当課へ電話しリサーチ。多くの自治体がすでに行っていたが、人口規模やエリアのバランスを考えて自治体をピックアップした。お忙しいところご対応いただいた職員さん、ありがとうございました。
◆宮城県仙台市 (人口/約109万人)
がん患者医療用ウイッグ購入費助成事業(担当:健康福祉局健康政策課)
・制度開始/平成30年度 ・年間の利用数/令和2年度284件
・利用者からの声/ウイッグの金額は2万円未満のものから20万円以上するものもあり、負担感はさまざま。だがニーズはあると感じている。
◆群馬県高崎市(人口/約37万人)
医療用ウィッグ等の補助事業(担当:健康課健康づくり担当)
・制度開始/令和元年より ・年間の利用数/令和元年183件、令和2年183件
・利用者からの声/ウイッグのほか、胸部補整具(ノンワイヤーソフトブラ、パッドなど)、エピテーゼ(人工乳房、顔面の補綴など)等も対象にしている。少しでも足しになる、よかったという声をたくさん頂いている。
◆栃木県栃木市(人口/約15万人)
医療用ウイッグ購入費補助金(担当:健康増進課健康づくり係)
・制度開始/平成28年度より ・年間の利用数/50~70件程度
・利用者からの声/社会復帰を目的にしている。利用者へのアンケートを取っているが「外に出やすくなった」という声をいただき、事業目的とニーズがマッチしていると感じている。金額は他市の状況を参考に設定しているが、医療用ウイッグは高額なものが多く「補助内だと足りない」という声もある。
◆富山県小矢部市(人口:約3万人)
がん患者補正具購入費用助成事業(担当:民生部 健康福祉課)
・制度開始/令和元年7月より ・年間の利用数/令和元年度9件、令和2年度8件
・利用者からの声/ウイッグは頭皮保護用ネット含む、乳房補正具(補正パットと人工乳房。補正パットや人工乳房を購入した場合は、それらを固定する下着も含む)も対象。窓口にきて申請されるが、その後はお会いしないので、直接的には分からない。しかし、ウイッグのほかにも乳房補正具も対象にしており、社会復帰やイキイキとした社会生活を送るのに、助けになっていると考える。
◆兵庫県神戸市(人口:約153万人)
がん患者アピアランスサポート事業(担当:健康局健康企画課)
・制度開始/令和3年4月より ・年間の利用数/制度をスタートしたばかり
・利用者からの声/乳房補正具(下着とともに使用するパッド含む補正下着)、人工乳房も対象。医療用ウイッグが高いので、経済的に助かった、社会に出るきかっけになった、という声をいただいている。
要望書を作成・提出
2021年7月、新潟県美容組合 長岡支部さんと長岡市議会議員 荒木法子の連名で長岡市長あてに要望書「医療用ウイッグの購入助成について」を作成し、要望を頂いた美容師さんと一緒に提出した。
2022年度から助成制度がスタート
その後、検討を重ねて頂き、2022年(令和4)から助成制度「がん患者医療用補整具購入費補助金」がスタートした。
同年10月11日時点での補助件数は70件(ウイッグ53件 乳房補整具17件)
利用者やがん支援センターからの声
・抗がん剤治療など多額の医療費がかかる中でこうした制度があるのはありがたい。
・ウィッグがあることで前向きに治療に取り組める。
・もう少し簡単な申請方法だとありがたい。
・補助金があることで、できるだけ自然な形で見えるように(補整具をつけていることがわからないように)グレードの高いものを購入することができる。
・患者に治療の説明をする際、合わせて補助制度の説明をすると、患者から治療に対する前向きな姿勢を感じることができる。患者としては、長岡市が治療を応援してくれているように感じるのだと思う。
・・日赤、中央病院ともに市外の患者も多く、そうした方から自分の住所地での制度創設を望む声が多く聞かれる。
補助制度創設に力を尽くしてくださった長岡市職員の皆さま、ありがとうございました。

その後の展開
はじめにお話しを頂いた美容師さんは、同じ思いをもった県内の美容師さんと連携して、アピアランスケアのイベントなどを多数行っています。美容師さんたちのネットワークもあり、県内市町村で医療用のウイッグを含む医療用補正具助成金の制度が広がりました。
新潟県の医療用補正具助成金をまとめたページやイベント情報も掲載
あぴケア新潟
この制度を県内に広げるため新潟県議会でも質問
2023年(令和5)より新潟県議会議員となり、新潟県 令和5年9月定例会本会議にて、医療用補正具助成金について県知事へ質問。
<荒木から知事への質問>
がん治療の大きな柱は、手術治療、抗がん剤を投与する薬物療法、放射線治療の3つです。手術だけ、あるいは薬物療法だけを行うこともあれば、2つ以上の治療法を組み合わせる場合もあります。
がん治療に伴う副作用により、脱毛、肌色の変化、皮疹、爪の変化、手術による傷痕など、様々な外見、アピアランスの変化が起こり、仕事や育児・介護の場面で周囲の方の視線が気になって、今までのような役割を果たすことが困難になる方がいます。
その変化を補完するアピアランスケアについて、国は今年度から新たに相談支援体制を検証するモデル事業を創設し、取組を開始したところであります。
県内では、新潟市、長岡市、燕市、柏崎市、加茂市がウイッグや人工乳房、補整下着等の購入費用の支援事業を始め、クオリティー・オブ・ライフの向上を図り、治療と社会参加の両立を支援する取組が広がりつつあることから、県としても取り組むべきであると考えますが、知事の御所見を伺います。
<花角新潟県知事からの答弁>
アピアランスケアの取組についてでありますが、がん治療による外見の変化に起因する苦痛を軽減する医療用ウイッグや補整下着といったアピアランスケアは、がん患者のQOLの向上に寄与し、治療と社会参加等の両立支援に資するものと考えており、議員御指摘のとおり、独自に購入費用の支援を実施している市町村もあると承知しています。
アピアランスケアについては、患者及びその家族の不安や疑問に対し、がん診療連携拠点病院等において相談支援を行っているところですが、県では、これまで、がん患者の経済的負担を軽減するための助成制度の創設について、国に要望してきております。
県といたしましては、引き続き、国への要望を行うとともに、がん患者のQOLの向上に向けて、他県の取組などを参考に、効果的な方法を検討してまいりたいと思います。
県でも医療用補正具の助成事業を開始
2024年(令和6)から新潟県として、がん患者にむけ医療用補正具の助成事業を市町村を後押しする形でスタート
新潟県がん患者医療用補整具助成事業について
がん患者のアピアランスケアについて
2025年(令和7)現在、25の市町村が医療用補整具の助成事業を行っている。
